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できるだけ早いタイミングで世界や社会の現実の中に飛び込み、異なる価値観にぶつかる社会体験を通じて、世界で戦える人材、すなわちグローバルな視点をもって未来を切り拓くことが出来るたくましい人材を育成するために、大学の教育力強化の必要性がある。
しかし、留学やインターンシップなどの社会体験活動は充分に機会が与えられておらず、諸外国において海外留学する者の数は増えている一方で日本人留学生は減っている※2。
イギリスなどでは、「ギャップイヤー」という、大学入学前・在学中などに、留学やインターンシップを行う習慣があり、日本の大学においても、学事暦についてより弾力的な制度を導入することが期待されている。当然、日本で大学が秋入学に完全移行すると、就職などの様々な仕組みに合わないなどの課題が指摘される。したがって一律に決まった形で導入するのではなく、実践を積み重ねて多様なロールモデルを確立していくという努力が期待される。
平成25年度から導入が可能になった4学期制あるいはそれに準じた教育課程編成は、学期の区切りや長期休業期間を海外の大学に合わせることが出来るため、留学などの国際交流が促進できる。
このためには、社会や企業による支援の促進も必要である。産業界がギャップイヤーの経験を積極的に評価し、そのことが情報発信されることを期待する。国も、ギャップイヤープログラムを経験できる環境をつくるために、支援を迅速かつ着実に行う必要がある。
今回の東大における4ターム制導入の背景には、このような文部科学省の検討会議での意見がありました。本まとめからは、制度的に留学しやすい環境を整えようという意図が見られますが、本当に4ターム制を導入することによって学生の留学への意欲は高まるのでしょうか。私達の集めたアンケートでも、留学しない理由として「学期編成の問題」を挙げている学生は多くありません。文科省の検討会議においても、経済的問題や留学したことによる留年への懸念が、留学に関する主な障害とされていました。
4ターム制度の導入という、大学全体に大きな影響や混乱をもたらすことに見合うような効果があるのか、充分な検討が必要ではないでしょうか。
※1文部科学省主催の「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/57/index.htm
※2文部科学省資料「我が国の大学の国際化の状況について」
今回は、わたしたちが行っているアンケートから、暫定的な結果(2015/2/17現在、回答数:84)を一部抜粋してみたいと思います。(最終的な報告はもうしばらくお待ちください。まだ回答は募集中です。回答の増加によって結果が一部変わる可能性があります。あらかじめご了承ください。)
説明を受けたことがない人が6割以上
まず、この度の学事暦改革について、今年度(2014年度)が始まってから何らかの説明を受けたかというと質問に対しては、「直接説明会で説明を受けた」(15.5%)および「メール、掲示板等で説明があった」(16.7%)を合せても32.2%に止まり、「説明を受けたことがない」が63.1%と半数を超えています。しかも告知されたのは、10月を過ぎてからというもので、いかにこの改革案が早急であり、かつ周知が不徹底かを示していると思われます。
8時半始業に反対が約9割
つぎに、1限の始業時間が8:30から始まることについては、「賛成」(2.4%)「どちらかと言えば賛成」(8.3%)を合せても10.7%に過ぎず、「反対」(59.5%)、「どちらかと言えば反対」(29.8%)と89.3%の人が反対しています。
4ターム制反対が8割以上
さらに、改革の本丸である4ターム制については、「反対」(60.7%)、「どちらかと言えば反対」(23.8%)とこちらも反対派が8割を超えており、「賛成」という人は6.0%で、「どちらかと言えば賛成」(9.5%)を含めても15.5%に止まっていることがわかります。
さらに学事暦改革について具体的に挙げられた「声」を拾ってみます。
・「7月に試験があるようになると、司法試験予備試験の論文式や法学既習者試験と時期が被って準備が十分に出来なくなる」
・「学部毎に長期休暇の期間が異なる新学事暦により、サークル等の課外活動の運営に重大な支障が生ずることが予想される」
・「折角理系と文系が同じ大学にいるのに、文理間の交流を阻害するようなカリキュラムには反対」
・「4ターム制という基本的な理念自体は非常に良いと思うが、学部間のズレや細部での妥協の積み重ねが状況を複雑にしている印象を抱く」
・「部活との兼ね合いが不安」
・「他校が長期休暇中だが東大は授業日に対外試合が行われる可能性が極めて高いがそのことについてどのように考えているのか」
東大以外では既存の諸制度は変わらないわけですから、学部生(1・2年生/3・4年生)、大学院生(修士課程/博士課程)などそれぞれの立場にもよりますが、就職活動とインターン、部活動やサークル、司法試験や教育実習、修士論文の執筆とそのための調査・実験など、これらの「声」を一瞥しただけでも、さまざまな面において大きな支障が出ることは想像に難くありません。わたしたちは、学生の存在を顧みない稚拙な「改革」により2015年4月以降に大きな混乱が起き、個々の学生の生活に支障が出ることを憂慮します。
さらに、こうした「改革」を、教員や職員も含めた大学の構成員の声を一切聞かずに断行しようとする点もまた、われわれにとって大きな問題であることを急いで付け加えなくてはなりません。大学は、教員と学生だけで構成されているのではなく、(非正規を含む)職員もまた重要な存在であることを付言しなければなりません。こうした、多様な構成員の存在を顧みない、トップダウン式の「改革」の進め方についても、さまざまな「声」が寄せられています。この点については今後また取り上げたいと思います。